食品業界研究会:紅麹サプリ問題からコーポレートガバナンスを考えるにいってきました

日は東京都中小企業診断士協会・食品業界研究会の定例会へ。テーマは「紅麹サプリ問題からコーポレートガバナンスを考える」でした。
健康被害が公開され、販売中止となった紅麹サプリですが、健康被害が報告されたのちの企業の危機管理体制と経営判断の重要性について深く考えさせられる内容でした。
2024年1月15日に初めて健康被害の報告を受けたのち、実際に製品回収と公表を行ったのは3月22日。その間に2か月以上もの時間が経過していました。
この遅れにより、最終的には2,782名もの健康被害報告が寄せられ、社会問題化。
紅麹サプリが属していた「機能性表示食品」のジャンルも大幅な軌道修正が行われることとなりました。
このような問題の背景には
➀情報伝達の遅れ: 健康被害情報が迅速に経営層に伝わらなかった
➁意思決定の遅延: 製品回収の判断に2か月以上かかった
③リスク管理体制の不備: 健康被害発生時の対応手順が不明確だった
などの問題があります。
講演では「経営判断の原則」についても触れられました。
このような事件が起こった際に、善管注意義務違反になるか、取締役の責任を判断する際の重要な基準です
第1要件: 情報収集・分析・検討が合理的であったか
第2要件: その情報に基づく判断が不合理でなかったか
製造メーカーが健康被害の重大性を認識しながら、原因究明を優先し、消費者への情報提供が遅れたことが問題視された事件でした。
ただ、このような事態に陥った時、正しい判断ができるかどうかは事前に対応策を想定しておくことも必要であると思います。
メーカーとしてはせっかく開発した商品をどうにか生きながらえさせたい、明確な原因をつかみたいと思う気持ちもあったのかもしれません。
日々変わる経営環境の中で万全の対策を準備することは難しいですが、当時対応に当たった経営層に健康被害に対する対応について迅速に取り掛かる意識があれば
違った結果になっていたのかもしれません。
この紅麴サプリ問題をうけて、2024年8月には法改正が行われました。
食品表示法改正: 機能性表示食品の届出者に健康被害情報の報告を義務化
食品衛生法施行規則改正: 機能性表示食品・特定保健用食品に限定して健康被害情報の報告を義務化
しかし、これらは機能性表示食品等、一部の食品に限定されており、一般の健康食品については依然として経営判断に委ねられています。
食品安全の重要性に対して、改めて一石を投じたこの事件ですが、どのような食品であってもこのような事態が起こる可能性はあります。
多くの食品回収情報があるように、事件にならないとなかなか表面化しない情報ではありますが、自社で同様の事例が起こった時にどのように対応するかを決めることは大切なことです。
今回の講演から得られた重要な教訓は以下の通りです:
- 消費者の安全を最優先に考える姿勢
- 迅速な情報公開と製品回収の判断
- 適切な内部統制システムの構築
- 専門家への相談と行政との連携
特にB to Cビジネスにおいて、健康被害の可能性がある場合は、原因究明よりも被害拡大防止を優先すべきという点が強調されました。
多くの中小企業で営まれるB to Bビジネスでは健康被害の情報伝達などでB to Cビジネスよりも時間がかかるかも知れませんが、主要な取引先との取引停止など、B to Cビジネスとは別の軸で状況が悪化する可能性があります。
食品安全の重要性を再確認するとともに、問題発生時のエスカレーション、対策をBCPとして考えておくことが大切ですね。
粟谷先生、本当にありがとうございます。