実践型防災教育の活用法〜そなエリア東京・本所防災館から学ぶBCP推進のヒント〜

先日、東京都中小企業診断士協会・BCP・CSR研究会の定例会で発表の機会をいただきました。テーマは「実践型防災教育の活用法v2〜そなエリア東京・本所防災館から学ぶBCP推進のヒント〜」です。
多くの中小企業でBCPの重要性は理解されているものの、実際の策定が進まないという課題があります。クライアント企業からも「何から始めればいいかわからない」「経営陣がなかなか本気になってくれない」といった声をよく耳にします。
そこで今回、都内の防災体験施設を実際に取材し、中小企業診断士としてどのようにこれらの施設をBCP策定支援に活用できるかを検討してみました。
防災体験学習が持つ"触媒"としての機能
今回のセミナーで特に強調したかったのは、防災体験学習がBCP策定の"触媒"として機能するという点です。
書類や資料だけでBCPを説明しても、経営者の心に響かないケースは少なくありません。しかし、実際に防災体験施設で地震や水害を体験することで、災害の恐ろしさをリアルに実感し、BCP策定への本気度が高まります。
私自身も今回の取材を通じて、「百聞は一見に如かず」ということを改めて実感しました。
都内の防災体験施設を実際に取材してみて
そなエリア東京(有明)での発見
ゆりかもめ有明駅からすぐの場所にある「そなエリア東京」。利用時間は9:30〜17:00、料金は無料です。
この施設の最大の特徴は、首都直下地震発生後の72時間をシミュレーション体験できること。実際に体験してみると、災害発生直後だけでなく、その後数日間にわたって何が起こるかがリアルに感じられました。
特に印象的だったのは、サプライチェーンの途絶がどのように広がっていくかという時間軸の視点です。IT企業やオフィス系の企業にとって、オペレーション継続計画を立案する際に、この72時間の体験は大きな示唆を与えてくれると感じました。
経営陣に「BCP策定が必要です」と説明するより、この施設で実際に体験してもらう方が、はるかに効果的ではないでしょうか。
本所防災館の活用可能性
本所防災館は9:00〜17:00の利用時間で、こちらも無料。WEB予約が可能です。
取材してみて驚いたのは、都市型水害の体験がここまでリアルにできるということ。地下に事務所や倉庫を持つ企業への提案材料として、これは使えると直感しました。
例えば、地下に在庫倉庫を持つ卸売業のクライアントや、地下フロアで飲食店を経営している企業の場合、この体験を通じて水害時の避難計画や資産保護の重要性を実感してもらえるはずです。具体的な避難手順策定の参考にもなります。
組織文化として定着させることの重要性
セミナーで参加者の皆さんにもお伝えしたのは、一度の体験で終わらせないということです。
防災体験学習を一度だけのイベントとして終わらせてしまうと、時間が経つにつれて記憶が薄れていきます。そうではなく、定期的な研修や訓練のプログラムに組み込み、組織文化として定着させることが肝要です。
例えば、新入社員研修の一環として防災体験を組み込んだり、年に一度のBCP訓練の前に体験施設を訪問したりすることで、継続的に防災意識を維持できます。
中小企業診断士としての新たな支援の形
今回の取材とセミナーを通じて、防災体験学習が単なるイベントではなく、BCP策定支援における重要な経営支援ツールであることを再認識しました。
クライアント企業の実情に合わせた防災教育の提案は、中小企業診断士としての大きな付加価値になります。特に、BCPの必要性を理解してもらうための入り口として、これらの施設を活用することは非常に効果的です。
ただし、あくまでも防災体験学習は"触媒"。体験させることが目的ではなく、そこから実際のBCP策定につなげていくことが診断士としての腕の見せ所だと考えています。
KSB経営サポートでは、BCP策定支援はもちろん、このような実践的なアプローチを通じた経営支援を行っております。防災・BCP対策でお悩みの企業様は、ぜひご相談ください。
研究会の皆様、貴重な発表の機会をいただき、ありがとうございました。